2007年03月12日

間違ったメンテナンス。


 15年ほど前、ボクはコクサイというエアガンメイカーでアルバイトをしていました。
 このアルバイトを紹介してくれたのは、TOMOちゃんです。
 当時、コクサイでは、新作のエアガンやモデルガンの生産に追われていて、人手が足りず、修理品が山のように溜まっていました。
「この修理品を何とかしないと…。」
そう考えた、コクサイの岡田部長がTOMOちゃんに相談し、修理専門スタッフとして、ボクに白羽の矢が立ったのです。

 あれよあれよという間に、採用が決定し、初出勤の日となりました。
 組立工場の一角に専用の机を用意していただき、さっそく仕事をはじめるため、修理品の置いてあるところへ行ってビックリしました。そこには、壁一面に高々と積み上げられた修理品があるんです。数でいえば、200梃を超えていました。この修理品の山を見て唖然としているボクに、受付のおばさんが、
「これはまだ一部で、向こうにこの倍くらいはあるわよ。」
もう目が点になりました…。

 初めて挨拶にいった際に、岡田部長から、
「修理はたくさんあるから仕事には困らないよ。」
そう言われたのですが、まさかこれほどとは思ってもみませんでした(笑)

 まぁ、見ていても仕方がないので、一つひとつ片付けていきます。
 これだけの数ですから、修理品の中にはいろいろなものがあります。パーツの破損や消耗はモチロン、初期不良品なんかもあります。

 はじめて1週間くらい経ち、直したエアガンの数も100梃近くになった頃、ある修理品を分解していて思わず手が止まってしまいました。 作動不良ということで送ってこられたリボルバで、作動確認のために動かしてみるとトリガーが引けなくなっていました。

 まずは原因を探るためにサイドプレイトを外してみてビックリ。何と、パーツとパーツの隙間に、正体不明のゼリー状の固形物が詰まっているのです。しかも、これが異臭を放ってるんです…。
 グリスかと思ったんですけど、良く見てみるとどうやらそうではないようです。とにかく、この固形物が原因なのは確かです。分解して、バラバラにした後、全ての固形物を取り除いてやります。しかし、これがなかなかクセ者です。パーツにこびりついていて、ふき取ろうとしても取りきれないんです。
 結局、内部パーツを全て新品と交換することになりました。
 修理代金の見積もりを知らせるために、依頼人に連絡を取り、その旨を伝え、了解を得ました。その際に、どうしてこうなったのかを尋ねると、とんでもない答えが返ってきました。

「動きが悪かったからサラダオイルを使用した。」
というのです。

 それを聞いて、あのゼリー状の物体が何だったのか納得できました。あれは、サラダオイルが酸化し、腐食して、固形化したものだったのです。道理で臭いはずです。だって腐った油が入っていたんですから…。
 その後、約10分に渡って、メンテナンスについて説明したのはいうまでもありません。

 ビックリしたのは、潤滑剤にサラダオイルを使用している人が意外と多かったことです。100梃に1梃か2梃の割合で、固形化したサラダオイルによる作動不良品が持ち込まれました。

 あれから、15年以上が経過し、エアガンも進化しました。高性能なモデルも数多く登場し、専用のメンテナンスグッズも発売されています。しかし、時代は移り変わっても、メンテナンスへの意識というのは同じようです。聞いたところによると、いまだに年に数梃は腐ったサラダオイルにまみれたエアガンが修理品としてくるそうです(笑)






Posted by taku  at 15:17 │Comments(0)

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